祝福/玄侑 宗久・坂本 真典

祝福

祝福

どこで見かけてこの本を読むことにしたのか、忘れてしまった。メモに残っていた、ということだけ。


お坊さんをしながら、作家活動もしている玄侑氏。01年には芥川賞を受賞。
もうひとかたは、フリーカメラマンの坂本氏。
お坊さんと写真家の共著という変わった組み合わせなので、本も小説なのか、写真集なのか、分類しがたい。数ページ以内に文章と写真が交互に並ぶ。ページ数でいえば、たぶん写真のページの方が多いだろう。


上野駅の近くにそれなりの大きさの(と思ったが)池があり、そこには蓮がたくさん生えているのだろう。そんな蓮の表情を織り交ぜながら、蓮を通じて知り合った二人のこの10年の物語。
主人公の男の気持ちに呼応するように季節が移り、用いられる蓮の写真も変わっていく。ゆっくり流れる物語の間に挿入される写真にこちらの心が吸い込まれる感じがする。
静かに流れる幸せの時間があった、ことを感じさせるものがあった。
中々いい物語だった。